今年も信州小布施を後方ブロックから走らせて頂きました。私は大学4年間、競技スキー部に所属し、湯田中温泉の手前、夜間瀬の反対側に位置する高社山の北斜面・木島平のポールバーンが合宿地だったので、冬期は試験と追試以外は牧の入ゲレンデの山麓にあるロッヂに居候させてもらっていたことから、今も長野県北信地方には深い思い入れがあります。
もはや誰も知らない伝説のダウンヒルキャンプ・スキージャーナル杯・野沢3連戦が開催されていた昭和の頃の話です。
小布施は長野県で一番小さな町。止まらない人口減少で過疎に悩まされ、町の存続を賭ける寒村でしたが、40年間に渡るひたむきな独自のまちづくりを目指した地域活動を短編ドキュメンタリーに映画化した「おぶせびと」で、ハリウッドやロンドンの映画祭でWINNERを受賞してレッドカーペットに招待されたのはまだ数年前のことです。
この地で開催される「小布施見にマラソン」は参加者8,000人規模のハーフとしては異例の制限時間5時間、地元産スイーツやフルーツも振舞われる公式エイドが全部でなんと16箇所、最終ブロックからスタートすると号砲からスタート地点に辿り着くまで20分を超える市民マラソン大会の常識を超えたランニングイベントです。
リオデジャネイロ男子競歩・日本代表のメダリスト荒井広宙選手が生まれ育った町であり、地元の方々の献身的なサポートで支えられるランナーの走力を問わない「小布施見にマラソン」は私の脚が朽ち果てるまで走り続けたい大会のひとつです。
その一方で一部の心ないランナーの方がコースが走りにくいとか、エントリー費が高いとかSNSに書き込まれているのを見ると悲しくなります。本気でそう思われるならエントリーする大会を間違えています。
タイムを狙いたい市民ランナーさんはもっと競技志向の強い大会に出られるべきでしょう。文句を言う前に大会コンセプトをよく熟読して欲しいです。大会要項に「海の日!海のない小布施に波をつくる」「すべてのランナーにやさしい大会をめざして」とちゃんと書いてあります。
それとエイドやゴール後のフードサービスは食べ放題じゃないんだから、速く走れるランナーさんは後からヘロヘロでやって来る人たちのことも少しは考えて欲しいです。私も前半に愛想を振りまき過ぎてひとくちあんずを食べ損ねました笑
以前に私の勤務先の仕事で市民マラソン大会のスポンサー稟議を起案したことがあって、そこ経験値から恐らくシステム経費や販促イベント、広告宣伝費を除く純粋な小布施マラソンの大会運営コストは1.5〜2億円ぐらいと試算します。ちなみに東京マラソンは約20億円。
しかしローカル大会には見えない労務コストもあってコース上の公道は自治体と警察、河川敷は国交省、車道を交差するポイントは警察の検証、私道や農道、および簡易トイレやエイドを設置する私有地は土地の所有者とすべて個別交渉が必要です。
小布施はコースに路地や畦道が多く神社仏閣も含まれるため、開催確定に漕ぎ着くまで気が遠くなるほど交渉作業は膨大なものでしょう。20年以上続いているのだから前回の随契でいけるのでは?なんて世間知らずのとんでもない勘違いです。
都市型マラソンと違って大手スポンサーが複数社もあるわけでもないのに、数十年前に引退した小田急や東急、東京メトロやJRの中古車両を走らせ、自動改札すらない経営難の長野電鉄の臨時列車は全て無料。
これはつくばマラソン開催日に、秋葉原→研究学園間のつくばエキスプレスが無料開放になるのとほぼ同義です。おまけにオールスポーツの写真は1枚タダ。→ 今どき当たり前のことなのでしょうか?
これらのランナーに対する手厚いサポート内容から考えて参加人数から割り戻したらこの大会のエントリー費はバーゲンプライスでしょう。
新幹線や飛行機に乗って余暇の市民マラソン大会に遠征できる多少の経済的余裕を持つ良識あるオトナなら地域経済にお金を回すことは社会義務です!
..と、冴えないビジネスマンの端くれの私でさえもそういう思考です。小布施のような大会がもっと日本中に広がってゆく平和な日本であって欲しいと心から願います。
懐かしい昭和の風景が次々と走馬灯のように目に飛び込んで来て、この美しい景色は平凡な日常のどこにでもある豊かな一瞬の連続で出来ているんだなぁと知らされる小布施。
全国のファンランナーの皆さん、また来年、小布施でお会いしましょう♪
「小布施見にマラソン」Forever ♡
END